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「このコピーを描いたひとに会いたい」。もともとはポスターのコピーを描くだけの予定だったのですが、そのコピーを寛斎さんにとても気にいっていただき、お会いすることになったのでした。挨拶をするとすぐに握手をもとめられ、とても褒めていただき、恐縮したのを覚えています。『山本寛斎』さんは、デヴィッド・ボウイをはじめとするレジェンドたちといっしょに、20代の頃から世界で活躍してきたひと。もちろん「褒めてもらいたい!」と思い、がんばりました。でも、やっていくうちに、どんなに褒められても、じぶんは寛斎さんのまわりにいるたくさんの人たちのなかの1人に過ぎないのかもしれないと感じるようになりました。そして湧いてきたのが、単純ですが「もっとがんばろう!!」というエネルギー。プレゼンは毎回、1対1の真剣勝負。寛斎さんを目の前にして、もってきた案をひとつずつ壁に貼りながら説明していきます。なかなかシビれたのが、ある年、いろいろと行き違いがあったようで、もってきた案が「全部ちがう」と言われたとき。不穏な空気。このとき不思議だったのは、「不安」というより「怒り」に似た感情が湧きあがってきたこと。負けないぞ。「じゃあ、この場で描きます」と言い放ち、本当にその場で描きました。にらみつけるような気もちで。すると、やはりそっちの案のほうが自信もあったし、「そっちのほうがいい」となって、こういう方向でもうすこし探ってみようとなったのでした。そうした修羅場を何度もくぐってきたことは、どこかで自信というか、たいていのことなら何とかできるという余裕のようなものにつながっている気がします。